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SICF9 グランプリアーティスト展

藤井秀全 『Stain“Outward”』

会期: 2008年10月25日(土) - 10月28日(火)
会場: ショウケース (スパイラル1F)
主催: 株式会社ワコールアートセンター
企画制作: スパイラル

触れることのできない光の存在を感じさせる確かな表現力

2008年5月に開催したSICF9でグランプリを獲得した、藤井秀全の個展を開催しました。 LEDを用いて、まるで布目に染みわたる水のように、光が空間に広がるさまを視覚化した作品でSICF9グランプリを受賞した藤井秀全。「Stain (ステイン/染み)」というタイトル通り、画面から滲み出た光の「染み」が鑑賞者に浸透し、光と一体になるかのような感覚を呼びおこします。これは、私たちに絶えず降り注ぐ、光の動きや、その働きかけを視覚を通じて再体験させる試みでもあります。彼はこれまでも、私たちの周りに確かに存在しながら、その存在や動きを認識することが難しい「光」「空気」「時間」などを、身体感覚を通じて体験できる形に変換する実験的な作品制作に挑んできました。白い空間に浮かびあがる繊細な光の視覚的な美しさとともに、光が空間や見る者の心に及ぼす影響までも体験させる新しい表現として、審査員から高い評価を得ました。

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本展では、グランプリ受賞時に展示した《Stain(ステイン)》シリーズと、同作品を制作する思考経過で生まれた写真作品《Trace(トレース)》、偏光板を通過した光がセロテープを多彩な色に染める立体作品《Color(カラー)》など、光をテーマにした作品を展示しました。特にメインの展示作品は、過去最大規模の1800mm×1800mmの新作でした。 展覧会名にある「Outward(アウトワード)」は「外へ向かって」を意味しています。巨大な光の「染み」は、青山通りに面した壁面から展示空間を超え、道行く人々、そして街の中へと浸透していきました。

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作家コメント

『光の染み』という言葉から制作しています。光が画面上で広がり、混じり合いながら「染み」のように像を成し、それは画面を超え空間に浸透していきます。 光という非物質が、形を作り、身体や空間に接触する感覚や浸透していく時間を感じ取れるような表現を目指しています。 今回の展覧会では、ショウケースが大通りに面していることから、『光の染み』が空間を超え、通りに、そして道行く人に浸透していくイメージで制作したいと考えています。光が画面上で混じり合うように、作品が街と、道行く人と混じり合うという関わりが持てればと思います。「外へ向けて」光を放つことは、これから自分の表現を社会へ向けて発信していこうとする行為と重なるように感じています。

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プロフィール

05グランプリアーティスト展

藤井秀全 (ふじい ひでまさ)
1984年奈良生まれ
2007年 京都造形芸術大学 芸術学部 美術工芸学科 卒業
同大学大学院 芸術研究科 芸術表現専攻 入学
【主な出展】
2005年 町家の宿 あずきやにて 雑貨&Cafe 臨時開店 (あずきや/京都)
2006年 ひろしまナイト美術大賞展 (新地ギャラリー/広島)
2007年 第2回大黒屋現代アート公募展 (大黒屋サロン/栃木)
アートオークション「A-CTION/アクション」(ギャルリ・オーブ/京都)
京都造形芸術大学大学院 open studio (京都造形芸術大学 未来館/京都)
2008年 SPURT 2008 京都造形芸術大学大学院修士課程中間報告展 (ギャルリ・オーブ/京都)
SICF9 (スパイラル/青山)
【主な受賞歴】
2008年 SPURT 2008 京都造形芸術大学大学院修士課程中間報告展 最優秀賞
SICF9グランプリ
2008年度 京都造形芸術大学大学院 特待生 採用
2007年 第2回大黒屋現代アート公募展 入選、お客様賞
2006年 京都造形芸術大学奨励制度 選抜
第14回ひろしまナイト美術大賞 大賞

Photo: Katsuhiro Ichikawa