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SICF15 受賞者一覧

山本優美(B-34) 『存在の感触』

グランプリ

山本優美(B-34) 『存在の感触』

2007 金沢美術工芸大学 美術工芸学科 陶磁専攻卒業

2009 ベルギー国立ラ・カンブル美術大学セラミックコース 修士課程修了


「存在の感触」は焼き物を記憶メディアとして捉え、中古の衣服や日用品を手彫りで象り、かつてそれらを身に付けていただろう人々、現代に生きる人々の姿を焼き物に記憶させるという作品です。私は日本とベルギーで陶芸を学びましたが、興味の先には常にアートがありました。工芸素材を扱いながらも工芸の唯物的な洗練よりも、作品を通じていかに私たちの生きる世界の「コト」に繋がることができるかをいつも考えていました。陶という素材は強い存在感があると同時に脆く、はかさも感じさせます。素材が持つこの両面は私たちが存在することに纏わる、本質的な感覚と共鳴すると強く感じています。
今回の展示を通じてたくさんの方とお話しすることができ、今後良い意味で期待を裏切られるよう挑戦していきたいという思いが一層強まりました。


審査員のコメント
紫牟田伸子
陶を「記憶のメディア」ととらえ、時間を封じ込める素材としたところがとても良いと思います。特にシャツや下着などの柔らかな手触りを感じさせるものが記憶の変化も時の変化とも呼応せずに微動だにせず、永遠に定着させられたものたちはどこか痛々しく、空虚な存在としての物体が醸し出す詩情と悲しさを感じます。ものと人との関係をいろいろと考えされられる作品でした。

南條史生
極めて工芸的な技術の高さ、インスタレーションのうまさ、日常性とアートをつなぐ問題提起などが、欧米的な現代美術とは違った日本的表現につながっているように思われる。多様な展開が見込める事も評価につながった。

岡田勉
記憶を留めるメディアとして陶を選択し、高度な技術と執着心で、日常品を全て自身の手で産み出している。
作品を効果的に見せる上で必要な空間構成の感覚も優れ、将来性を評価した。

山本優美(B-34) 『存在の感触』

準グランプリ

松下裕子(B-3) 『Valued - 対価 -』

2012 The Arts University Bournemouth (イギリス) イラストレーション修士課程修了


SICF15では、「Valued - 対価 -」 というタイトルの作品の一部を展示しました。ウエディングケーキを想起させる塔は紙で作られており、壁面にゆっくりと回転する影を落とします。この作品は、 価値に還元される女性の美醜や老若、性などのテーマを元に、ショーケースに並ぶ綺麗なケーキから着想を得ました。色とりどりで艶やかに輝くケーキをみていると、 格子やガラスの向こうで選ばれるのを待つ女性を思い出し、その均一的な美しさに私は時として違和感を感じます。一見ただ綺麗に見える作品ですが、よく見ると皮肉や毒が織り交ぜられており、時間をかけて見てくださった方は、そこに気づいて頂けたようです。 今回の受賞は自信へ繋がったと同時に、自分にまだ足りていない部分も浮き彫りになったと感じています。今後は、より独自の視点やテーマを掘り下げながら、作品を発展させていきたいと思います。

審査委員のコメント
浅井隆
その影に物語を感じる。一灯での展示の演出が優れていた。

佐藤尊彦
ブースをうまく活用したインスタレーションでした。テクニックに加え、人を惹き付けるセンスある展示は今後も活躍に期待できます。

岡田勉
決してフレッシュな作品と言う訳ではないが、技術と見せ方は成熟し安定感がある。スパイラルが行っている様々な事業での協働が想定出来る。

山本優美(B-34) 『存在の感触』

準グランプリ

菅本智(B-6)『Non-verbal communication』

2013 東京藝術大学美術学部デザイン科卒業


「Non-verbal communication」は自分を他者に伝えきる方法は「つくること」しかないと感じたことをきっかけに制作した作品です。表現することの喜びが身体中から湧き出てきて、制作している間中、幸せでした。そして、作品を見てくださった方々が一目見て、笑顔で驚いている様子を見ることのできた二日間はさらに幸せでした。本当にありがとうございました。 この幸福な時間のために、これからも作り続けます。

審査員のコメント
浅井隆
ロープで作った有機的なフォルムがまだ雲のように形を変えそうでエネルギーに満ちている。

佐藤尊彦
初めての抽象的な表現とのことでしたが、ダイナミックかつ印象深い作品に仕上げた点が評価に繋がりました。次回作のコンセプトに期待しています。

紫牟田伸子
帽子がコミュニケーションを司る存在としてになるおもしろさ、帽子から「頭」に着目したところにおもしろさがあり、すでに帽子ではなく、思いや会話などを想起させます。

山本優美(B-34) 『存在の感触』

オーディエンス賞

久野彩子(B-9)『imagined scenery “□”』

2008 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン科 金工専攻卒業

2010 東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻(鋳金)修士課程修了


鋳造技法を用い、心象風景をテーマに今回の作品を制作しました。
私が思い浮かべる“風景”は、建造物が密集している都市空間で、その多くは俯瞰された都市風景や建造物のアウトラインです。様々な質感を持たせた“□”の形の金属(シルバーと真鍮)を構成し増殖させていき、小さな形が繋がり合い、集まったときにひとつの形となって静かにうごめいて見えるような形を目指しました。会期中はたくさんの来場者の方々が自分の作品に興味を持って見てくださり、様々な感想やアドバイスを頂くことができました。その上、賞まで頂く事ができとても光栄です。
今後もこの経験を糧に作品を制作し続けていきたいと思います。本当にありがとうございました。

山本優美(B-34) 『存在の感触』

浅井隆賞

長谷川依与(A-19)『bristle』

2012 武蔵野美術大学造形学部空間演出デザイン学科卒業

今回私は綿棒で着る事のできる体毛を作りました。この作品は日常生活で使われている何気ない既製品に1アクションを加える事で、人が生み出した物から人が進化の過程で失った本能的なものを表現しました。展示中は多くの方に足をとめて観ていただき、本当に嬉しかったです。またこのような賞をいただけたことに感謝しております。 今後も人とは何か、その内側と外側、不可視のものから外的な表れまでを発想の原点として、人を表現するもの、人が関わることでできるものを制作していきたいです。ありがとうございました。

審査員のコメント
「WILDER MANN:ワイルドマン」という憶測の獣人を捉えた写真集に惹かれる。この綿棒マンはコンビニが点在する都市の獣人か、あるいは現代アートのゆるキャラか。着ぐるみに惹かれるように綿棒マンに惹かれてしまう。(浅井隆)

山本優美(B-34) 『存在の感触』

佐藤尊彦賞

橋本瞳(A-14)『The World Map accessory 〜身につける世界地図〜』

2006 武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 金工専攻卒業

2008 東京芸術大学大学院 修士課程 工芸専攻鋳金研究分野修了


今回のSICF15の出展に向け、数年前から取り組んでいたシルバーの世界地図を完成させることを目標にし、なんとか出展に至りました。大学院のころからライフワークの様に制作を始め、世界の国々の形、地形、土地、そこに居る人、そこに行った人、そこを離れた人、様々な思いを馳せながら制作をしました。しかし私は、思いつきの「身につける世界地図」を出来る限り形にするだけで、実際は、見た人、身につけた人が、シンプルに地図の形、ディティールに心動かされたり、ある国の風景、気候、人、思い出を思い出したり、見る人の思いによって作品が様々な意味を持って行ったことを感じました。そして世界地図は、これからも変化して行くと思います。たくさんの反響ありがとうございます。

審査員のコメント
硫酸で加工された陸地は、真っ黒な海というキャンバスを背景に白く輝いています。そして等高線を元に隆起まで再現され、国境という線を元に分断されたモチーフ達は、自国の誇りや他国への憧憬の念と共にチャーミングなアクセサリーとして身に付けられます。しかし世界地図としての作品に目を向けると、国境線の曖昧なモチーフもあります。ここに政治的要素や自身の立場を反映することを作者は選びませんでした。繊細で美しく、でもちょっぴりファジー。そんな、“現代社会における日本人らしさ”が魅力の作品です。(佐藤尊彦)

山本優美(B-34) 『存在の感触』

紫牟田伸子賞

酒井望(B-22)『未確認生物』

2013 東京藝術大学 美術学部 工芸科 染織専攻卒業

2014 東京藝術大学大学院 美術研究科 工芸専攻 染織研究領域在学中


私たちの世界の中には、私たちが認知していないだけで多種多様な未確認の生物がいる。 人はそれを幽霊だとか妖怪だとか名称を付けて呼んでいる。それらを架空の存在だという人もいるが、実際に存在している生き物だ。私はその一部を捕まえ標本にし、展示するに至る。 今回捕まえた生物は、平たく、とても素早いので捕獲するのが困難であったが、試行錯誤の上、捕まえる事に成功した…!
あらゆる生き物から感じ取ったラインや色を自分の中に取り込み一体化させたものを具現化し、また写真を展示する事によって物語のように作品自体のキャラクターや動きの想像をかき立たせて広がりを持たせました。沢山の方々に作品を見て頂き、次の作品に繋がる良い刺激と経験になりました。本当にありがとうございました。

審査員のコメント
伝統的な染色技法を用いてつくられた不思議な生物。「採集」というコンセプトで標本箱の展示に加え、生物たちを採集しているプロセスの物語が添えられているのが良い。ユーモラスな物語とモノとの関係がうまく出来ていると思いました。(紫牟田伸子)

山本優美(B-34) 『存在の感触』

南條史生賞

木内祐子(A-1)『変人は誰か』

2006 多摩美術大学 美術学部 絵画学科 日本画専攻卒業
2008 多摩美術大学大学院 美術研究科 絵画専攻修了

2011−2013 四谷アート・ステュディウム在籍


「変人と変人は互いに相容れないが、常識人はそれぞれの変人に対して理解がある」という仮説をもとに、常識人と変人が住む世界の構造、そして世界のルール規定者が誰であるかによって変化する社会についての考察を行い、常識人・変人それぞれのアーティストにインタヴューを行うという設定の映像作品を展示しました。このような内容を受け入れてもらえるか不安でしたが、会期中多くの方がじっくりと鑑賞してくださいました。賞を頂けたことも、普段考えていることが全くの間違いではないと認めて頂けたような気がして、嬉しく思っています。
今年は6月に、スロベニアのアーティスト・イン・レジデンスに参加します。社会を成り立たせている事物に目を向けつつ、芸術との接点を探っていきたいと思います。

審査員のコメント
よくわからない作品だが、気になる。問題意識は良い。但し、議論はもっと簡潔に、もっと明快に対立を表現する必要がある。作品として作られていなければならない、最後にオチが欲しい、など問題は多いが、意図のユニークさを評価する。(南條史生)

山本優美(B-34) 『存在の感触』

スパイラル奨励賞

小笠原圭吾(A-17)『POP』

2009 東京造形大学 造形学部 美術学科 彫刻専攻卒業

本作品は陶器でできたりんごをドットに見立て、りんごのドット柄を世界に広げるインスタレーション作品です。ドット柄は点が複数あって初めて成り立つ柄です。本作品も作者1人の力では作品として成り立つことはなく、ドット柄の1部分を構成してもらう作品の参加者とのつながりがあって完成へと近づいていきます。ドット柄が広まった結果、ドット柄を構成している参加者同士のつながりを感じていただくことを目的としています。


審査員のコメント
丁寧に手作りされた本物と見まがう程のリンゴを来場者に配布し、そのデータを収集し巨大な地図を作ると言う作品。 多様なアートの表現の中にあって、作家ならではのオリジナリティの獲得が期待される。 スケール感には好感を持った。(岡田勉)