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SICF11 グランプリアーティスト展

青木美歌 『animagraphy』

会期: 2010年10月28日(木) - 10月31日(日)
会場: ショウケース(スパイラル1F)
主催: 株式会社ワコールアートセンター
企画制作: スパイラル

人々のエネルギーを代謝しながら自己形成していく街 東京・青山

2010年5月に開催したSICF11でグランプリを受賞した青木美歌の個展を開催しました。

青木美歌は5つのガラス作品からなるインスタレーションでSICF11グランプリを受賞しました。
標本室を思わせる無機質な空間、暗闇に浮かび上がるガラス瓶。胃や肺、腸など、私たちの体内にある臓器を彷彿とさせる透明なオブジェは、青白い光を浴びてきらめきます。その形状は奇妙に美しく、ガラス瓶の中で静かに息づいているかのような不気味さもたたえています。
「アメーバから今の私の形になるまでの過程で、こうなり得たかも知れない、または100万年後、こうなり得るかも知れない内臓」をイメージして制作したというこの作品は、「新しい生命になろうとしているうごめき」や、「まだなにものにもなっていない、なにものになるかわからない状態」、「生命のゆらぎ」を表現しました。人知や科学の及ばない生命の不可思議さという抽象的な概念を、ガラスという素材の制約に縛られず私たちの眼前に現出させた独創的な表現が高く評価されました。

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本展では、「都市における生命活動の造影」をテーマに、大掛かりなガラスのインスタレーションを展開。人が環境の影響を受けてその人格を形成していくように、その場所に集まる様々な要素が発するエネルギーを代謝しながら形成してきた青山の街(都市)という生命活動を、15点のガラス作品から成る空間構成により発表しました。
アーティストにとって初めての経験である自然光の差し込む明るい空間での展示は、これまでの作品のイメージを大きく覆し、作品の新たな魅力を提示しました。
タイトルの『animagraphy』は街に浮遊する人々の心の動きや魂(anima)を写取るという意味を込めたアーティストの造語。

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作家コメント

内臓をただ寄せ集めても生物にはならないこと、炭素や水素をただ混ぜ合わせても細胞は生まれないこと、これらの事実には「見えているものに生命を与える見えない力」が働いているとしか思えない不可思議さがあります。
これまでは、粘菌・ウイルス・バクテリアなどをモチーフにした繊細なガラスのインスタレーション等を発表してきました。細菌・ウイルス・バクテリアのような原始的な生命形態に共通していることは、細胞あるいはそれよりも下位の物質が、外界や他の物質とコミュニケーションを続けている様がそのまま「形状」を為していることです。彼らは、構造が単純な分、見えない関係性によって生命と成っているという姿を如実に表しています。
生命体は主に遺伝子で形の作り方を決めていますが、形そのものは要素と環境が代謝を繰り返し、ひとりでに作りあがるものです。スパイラルのショウケースは多方面がガラス張りとなった開放的なスペースなので、この空間を利用して、青山通りを歩く人々とその思いを代謝し続け自己形成してきた「都市」という生命活動の造影を試みようと思っています。

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過去の作品

青木美歌は、粘菌やバクテリア、ウィルスをモチーフにした繊細なガラスのインスタレーションを発表してきました。 自由に伸び、ゆるやかにうねって螺旋を描き、まるで息づいているかのような有機的な表情をもつガラスの生命体は、静かに私たちに語りかけ、人と人との間に存在する感情の流れや記憶の蓄積、生命のゆらぎなど「私たちの目には映らなくても確かにそこにあるもの」の存在に気付かせてくれます。

fig_sicf11_grandprix_01.jpg写真ともに)SICF11出展作品「Fluctuation of life」/左側photo:市川勝弘

fig_sicf11_grandprix_02.jpg作品左から) her songs are floating/Photo:小牧寿里、IDNo.1.M.A05/10/1981/ Photo:坂本光三郎

スペシャルインタビューはこちらから

プロフィール

05グランプリアーティスト展

青木美歌(あおき みか)

武蔵野美術大学工芸工業デザイン科ガラス専攻卒業。卒業制作優秀賞受賞。
第11回岡本太郎現代美術展入選。2010年5月SICF11でグランプリを受賞。
www.sing-g.net

【主な展示】
2006年 武蔵野美術大学 工業工芸デザイン学科 ガラス専攻卒業 卒業制作優秀賞受賞
Jeans Factory Art Award 準グランプリ受賞
2007年 個展「のびる硝子」(mitateギャラリー/西麻布)
「Born In HOKKAIDO」(北海道近代美術館)
2008年 個展 (savoir vivre/六本木)
第11回岡本太郎現代芸術賞展入選、展示
個展「shining rain展」with HONDA PLUS (ギャラリーle-bain/西麻布)
個展「飛ぶための準備」日比谷パティオart コンテナ展示
2009年 個展「まといの硝子」(mitateギャラリー)
アートフェア東京2009出品
個展 (もりもとアートギャラリー/銀座)
個展「束の間の器かがやきの詞展」with HONDA PLUS (ギャラリーle-bain)
2010年 アートフェア東京2010出品
SICF11グランプリ受賞 (スパイラルホール/青山)
個展「fluctuation of life」(PLSMIS/青山)
「夜の庭」(59RIVORI-AFTERSQUATギャラリー/Paris)
現在 丸沼芸術の森にアトリエを構えている。
【作品提供】
2007年 YOSSY LITTLE NOISE WEAVERアルバムジャケット
2008年 LUNA SEA ベストアルバムジャケット

Photo: Katsuhiro Ichikawa